題がすごいと思った。知ったのは、たぶん本からの紹介だったかもしれない。ベストセラーの自伝風小説を映画化したものだった。

潜水服は蝶の夢を見る_e0390995_17395657.jpg

 脳梗塞で寝たきりの状態になる主人公。左目だけが機能している。人の話は聞き取れ理解できる。自分の思いを言語化する方法が圧倒される。なんと、左目のまばたきだけで行うのである。言語士がアルファベットを一つ一つ声に出す。[gderyj ka・・・」oの時に、瞬きする。それを繰り返していき、一つの言葉が確かめられる。love・・この4字だけ表現するのに、2分はかかる。こうして、自分の生い立ちから、人生を振り返り、小説にして、一冊の本を世に出すのである。この文章化には、気の遠くなるような時間と何百万回繰り返されるアルファベットのやりとりがあるのである。できないことはこの世にないと思われる。願えばどんなに不可能と思えても可能になっていくのだ。その間にものすごい時と努力があったとしても。ちょうど鉄の固まりを小さなドリルで穴を開けていくように、ドリルを1回回せば、0.00001ミリの穴があいていくのだ。確実に。それを数万、数億。数兆回 絶えず回していく、気の遠くなるような根気とやり遂げられるという信念と勇気に支えられている。

 主人公は言う。「私は、こうして植物人間みたいにただ寝たきりで、話もできないのに、自由である。それは、想像力と記憶の力があるから。」

 題の「潜水服」とは身動きのとれない自分の体、そして話すこともままならない海の中での境遇を象徴している。そんな自分が記憶力と想像力で、さなぎから蝶にふ化して自由にどこへでも飛び立っていくことは可能なのである。夢でも何でもない。潜水服をきたままであろうと、蝶そのものに変身できるのである。


こんなに心ゆさぶられた映画はない。